異世界旅行記

所謂、コンサート備忘録。

僕らがつないでいく(「平成中村座」 2017年6月11日・夜公演)

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611日の夜公演の平成中村座に観劇に行ってきました。最高でした………。

色々と書き残したいことがあるので、私の無い脳で思いだしながら、書き残しておこうと思います……。

 

 

tokai-tv.com

 

 

私の歌舞伎の観劇は今回が3度目です。

 

 

 そもそも、私が強く歌舞伎に興味を持ったのは、ひらかわあやさんの『國崎出雲の事情』がきっかけなのですね。

 梨園の御曹司の女の子みたいな男子高校生が主人公で、ざっくり言うと、その男の子と周りの人間が歌舞伎を通して成長していく物語なのですが、この主人公、古典歌舞伎の中にアドリブや新解釈をどんどん詰め込む人間でして(笑)歌舞伎の良さを描きつつ、現代との差異だったりを自然に埋めてくれており、歌舞伎の知識も練り込まれていて、衣装も素敵に描かれていて、話は少々突飛ですが、歌舞伎のハードルの高さを少し低くしてくれる、背中を押してくれる良いマンガに出会って、強く生で観てみたい!と思ったのです。

 

 

 もう一つ強く生で観たかった理由がありまして。それは、中村屋七之助さんを生で観てみたい、と思ったからです。

 私は嵐の松本潤さんのファンでして、中村七之助さんは、潤くんと堀越学園の芸能科の同級生で、ご友人です。よく七之助さんのご自宅に遊びにいかれていたそうで、七之助さんのご家族である故・十八代目中村勘三郎さんや奥様、勘九郎さんとも仲が良く、潤くんはダンスの練習を七之助さんの家の稽古場で行うこともあったとか。他にもエピソードは沢山。

 そういう仲良しエピソード聴かされたら、好感を持たずにいられようか、いやいられない。(反語) という事情で、七之助さんを拝見したいという気持ちがありました。

 

 

 初めての歌舞伎は、2013年9月、ちょうど東京に行くタイミングで行われていた舞台が、勘九郎七之助兄弟のご出演に加え、市川海老蔵さん、片岡愛之助さんといったテレビでも良く見たことのある面々のものだったので、物は試しと飛び込みました。

 そしたら、前半のアクロバットな演目にワクワクしたのと同時に、「吉原雀」の七之助さんの舞を観て、本当に艶やかで、艶やかで、潤くん関係なく、一役者としてファンになってしまいました。色っぽく、動きがしなやかで、こんな女性になれたらなぁ…と強く思ったのを覚えています。「歌舞伎=古くさい・つまらない」の構図が私の中で完全に壊れて、また、生で見たいと常々思っていました。

 

 

 

月日は流れ…。8年ぶりに「平成中村座」が名古屋へ来るという記事を観て、即座にチケットを申込みました。

というのも、七之助さんをまた観たいのと同時に、「平成中村座」自体に非常に興味を持っていたからです。数年前に「平成中村座」の特集を見て、ひどく感激したからです。伝統と革新、その融合の理想形がそこにありました。その時は、NY公演のお話と、大坂城公演の映像だったので、中村勘三郎さんがご存命の頃だったかと思います。屋根が開き、屋外の大坂城と桜が一体化した映像を見て、「かっこいい……」と強く思いました。それを実際に名古屋で観たいと思ったのです。

演目も、歌舞伎を少し勉強すればすぐでてくるだろう超有名どころの「義経千本桜」「弁天娘女男白浪」、中村屋の十八番だという「仇ゆめ」ということでこれは申し込むしかないと申し込みましたよね、ええ。

2階席1列目左側での観劇でした。内容のない感想をずらずらと書いていこうと思います。

 

この公演、イヤホンガイド様様でした。「嵐にしやがれ」で片岡愛之助さんが見えた際、松本さんがパンフレットで観るだけでも十分楽しめるとおっしゃっていましたが、個人的には知識のないうちはイヤホンガイド借りることをお勧めします。個人的に、歌舞伎は知らなくても楽しいけれど、基本的に知って観たほうが楽しいところの多い芸能だと思っているので。時代背景や話の筋、見所や衣装について、観劇に邪魔にならない絶妙なタイミングで入れてくれます。

 

次からうだうだと自分語りをしたところで、ネタバレ込みの感想をうだうだとしていこうと思います。

 

今回夜の部は、3部構成でそれぞれ1部は大体1時間程度でした。

 

 

 

 

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第1部      義経千本桜 川連法眼館」

 

義経千本桜」は、良く聞くし、一度見てみたいと思っていた舞台の一つでした。

 

あらすじ

吉野山中の川連法眼の館に身を寄せている九郎判官義経のもとに、佐藤忠信が参上します。義経は忠信に静の行方を尋あねますが、忠信は覚えがない様子。そこへ静と共に義経が参上した事が伝えられます。実は先に来ていたこの忠信は狐で、親狐が初音の鼓の皮に用いられているのを知り、忠信に化けて静に付き添っていたのです。親を想う子の情愛に心を打たれた義経がその鼓を与えると、喜んだ狐は鼓を手に古巣へと帰って行くのでした。
 本物の忠信から狐忠信への早替りや、狐言葉などの演出に加え、親を思う子の情愛の表現も大きな見どころです。

                 

(「名古屋平成中村座」公式HPより) 

 

 

第1部の狐も、第3部の「仇ゆめ」に登場する狸もなのですが、歌舞伎では動物を演じる際は手を閉じて、グーにして演じるようです。以前テレビでやっていた歌舞伎特集で知りました。今回も例外なくグーの手で終始演じられていました。

ためしに一度30秒ほど手をグーにしてみてください。

 

 

 

 

 意外と違和感を感じるんですよね。その手で優雅に舞うのだから、長年の経験によって培われた素晴らしい所作に惚れ惚れしました。

 中村扇雀さんの狐は本当に狐に見えて、素晴らしかった…。早替えも瞬きするほどの間での変化で驚いたし、人間と狐の演じ分けが素晴らしすぎました。

 中村梅枝さんの静御前は、品があって優雅で美しかったです。

 亀井六郎演じた中村萬太郎さんと駿河次郎演じた中村虎之介さんは、同じ踊りだけれどキャラクターの性格でフリの付け方が違って、全然違うようにも同じようにも見えたのが面白かったです。

 

 

 

 

 

第2部      「弁天娘男白浪 浜松屋見世先の場/稲瀬川勢揃いの場」

 

 まず弁天娘男白浪は、白浪(=盗賊・泥棒)が主役っていう設定が既に面白くて興味を持っていました。私が興味を持つきっかけになった漫画でもとても魅力的に書かれていて、最近私の中で今アツい歌舞伎を題材としたアニメ「カブキブ!」でも取り上げられていて、なにより、嵐の2015年のツアー「Japonism」の中の一曲で白浪五人男をオマージュした演出(ハート泥棒5人組…)があって……という、期待値マックスの中での観劇でした。

 

 

あらすじ

松屋武家の娘と供侍が婚礼の品を選びにやってきますが、娘は万引をしたとの疑いをかけられ打ち据えられます。ところがこれは店の者の誤りだったことがわかり、店側を強請りますが、それを玉島逸当という侍が呼び止め、娘が男であると見破り、実はこの二人が盗人だということが露見します。しかし玉島逸当こそ盗賊の首領・日本駄右衛門で、浜松屋の金を奪い取ろうとする企みでした。その後、追っ手を逃れ、稲瀬川に勢揃いした白浪五人男は名乗りをあげると…
 河竹黙阿弥の七五調の名台詞の数々で魅了する世話物の人気狂言をお楽しみください。 

                   (「平成中村座」公式HPより)

 

 

 

 

期待値かなり高かったのですが、期待値を遥かに超えてきました。

七之助さん、美しすぎる……。お嬢様似合いすぎるし、色気やばすぎるし、艶やかすぎるし、けしからん……と思ってにやにや観ていました。

 

 

 店の者とのやりとりもとても楽しかったです。

 店の者に「名古屋城平成中村座がやっているようですが、ご贔屓の役者などいますか、どれ、当ててみましょう。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花の七之助丈ですか」

弁天(七之助)「そんな役者嫌いよ」

それで店の者が「じゃあ、中日ドラゴンズに目がない片岡亀蔵丈ですか」

力丸(片岡亀蔵)「そんなやつ嫌いだ」

 

という、限定的な時代時代、場所場所に合わせたアドリブを…。こういうの皆大好きだし、ここですごく皆笑っていた。優しい空間だったなぁ……。

 

 

 

そこから色々あって、男と見破られた途端の第一声にゾクッとしたし、男になってから、足開きすぎだし、めっちゃ足見えるし……脚キレイだし、けしからん………(男だとバレる契機の刺青が足にも入っていて芸が細かいなあと思いました。)、本当にけしからん……、、、とゾクゾクがとまりませんでした、ええ。

 美しく艶やかな七之助さんの印象だったので、立役やっている七之助さんが「男」の色気すぎて、この人強すぎる………、と思いました。立役も結構やっていらっしゃるのでしょうか、どちらもめちゃめちゃ良い…となりました。(語彙力)

「知らざあ言って聞かせやしょう」の名台詞も良かった。

 

 そして、5人が並んだ姿、本当にかっこよかった……。5者5様に良くて、絵画のごとく美しく静止する姿にゾクゾクしました。衣装もとても、綱や松、鳥とキャラクターに合わせたもので、そういう部分を楽しむのも良いなあと思いました。

 

 

 

 

 

第3部      「仇ゆめ」

 

第3部は中村屋の十八番ということで、とても楽しみにしていました。結果、最高だったんですけど、色々と胸熱案件すぎたので、ずっと忘れられないと思います。

 

 

あらすじ                                                壬生川のほとりの野に棲む狸は、島原の深雪太夫に岡惚れしてしまいます。何とかして太夫の心をつかみたい狸は、太夫が憧れている舞の師匠の姿に化けて太夫のもとを訪ねていきます。そして日頃の思いを打ち明けると、日ごろから師匠への片思いに苦しんでいた太夫はその言葉を聞いて大喜び。そんなある日、二人の前に本物の師匠が現れ…
 太夫に惚れた切ない思いをユーモラスな踊りで描き出すところが見どころ。後半は純情一途な狸の姿をしんみりと描きます。おとぎ話のようなのどかな展開の中に笑いと哀愁が漂う作品です。
(「平成中村座」公式HPより)

 

まず、美しい深雪太夫(中村七之助・弟)に恋する狸(中村勘九郎・兄)という構図がまず胸熱で、息の合った姿がとても楽しかったです。七之助さんの演ずる深雪、可愛すぎるし、艶やかだし、狸が惚れるのも分かる…狸同担だぜ…という心持でした。

化けた狸師匠が、キセルを吸うシーン、扇子で演じられていて、落語に通ずる芸能の面白さを感じました。本当に吸っているようにみえるからすごい。(歌舞伎役者でジェスチャーゲームしたら最強そうとか、アホなこと思っていました())

そして、化けた狸師匠と本物の師匠の衣装の家紋が違うのも、粋。狸の足跡の家紋になっていたのでした。こういう遊び心大好きすぎる……。

 

そして、化けた狸師匠が本物の師匠に踊りを教えるシーン(狸であることを知っていてみんなで懲らしめようと一計を案じるシーン)があったのですが、そこの踊りが何分狸なもので、ハチャメチャなんですね。「みゃーみゃー」言ったり。(流石に今そんな名古屋弁使う人いないけれども、アイコンとしての「みゃー」とても嬉しかったです。ここも、その場だけの特別感。「調子はどうだー名古屋!」(CV.櫻井翔)みたいな)

そのハチャメチャでコミカルな踊りの中に、嵐の「ARASHI」のサビの振り付けがあって、潤くんきっかけで中村屋に興味を持った方々に対するサービスなのかなと、テンションが上がりました。こういうエンタメ心好き…ってなりました。(…ここで、まさか、潤くん此処にいる…まさかな…と思って、一瞬ソワソワしたのは内緒です())後、3代目JSBのランニングマンらしき動きもあり、伝統の中に入れ込む新しさがうまいなと思いました。恋ダンスとかいれても面白そうだなと思いました。

 

そして、狸は太夫と結ばれるのには千両箱が必要だと言われて(狸は千両箱がどういうものなのかを知らない)、千両箱を探し回っているところに村の男たちが罠を張るんですね。

村人から逃げ回る狸。

そこでなんと、勘九郎さん、客席に降りてきたんです!縦横無尽に客席を歩いて…。こういうの皆好きなやつだし、70歳くらいの上品そうなマダムがめちゃめちゃに手を伸ばして勘九郎さんに触ろうとしていて、(どこも、オタクってやつは…ふっ)と微笑ましい感じになっていたところに、

勘九郎さん、ある男性を両手でつかんで、どかせたのですね、狸の身代わりとして()

 そうその、どかされ、立たされた人こそ、松本潤……!!私は2階席の端だったのですが、マスクに青いレザーの細身の男性、これは潤松本や…ってすぐわかりましたね、ええ。

考えてみりゃ、ドームの5階席でもわかるんだから、2階ならわからないことがあろうか、いやわかる…。(家族には若干ひかれたが気にしない) 

あのちょっと無茶ぶり振られた感じの、恥ずかしいの照れ隠し感で立っていて、もう可愛い……ってなりましたよね、ええ。

歓声で聞こえなかったのですが、村人は「狸はそんなかっこよくない」と言っていたそうな。聞きたかった。(笑)

勘九郎さんがお礼の手ぬぐい渡されていたようで、花道でふと見た胸元にあった手紙のようなものの正体も分かってすっきりでした。

そして、狸によってたかって攻撃するさまは、「平成ぽんぽこ狸合戦」のようでした。特別悪いことはしていないのに……。悲しい。狸は命からがら逃げます。

そして逃げたタイミングで小屋が開く。グッとくる最後のシーン。人間にやられた狸と師匠と両想いながらも師匠とは結ばれることのできない深雪太夫。深雪太夫は狸の人を愛するけれど結ばれない気持ちがいたいほどわかるので、狸を尊重して、励まします。二人で儚く切なく舞うのです。

前半にコミカルな二人の舞いがあったからこそ、ここでの決死の舞が沁みるのよ……、泣けてくる。けれども、狸は力尽きてしまいます。名古屋城の外壁と桜、外と中曖昧に混ざり合って、何とも夢うつつな空間を作り出していました。

仇ゆめとは、すなわち「儚い夢」。最期の最後に狸は深雪との素敵な時間を過ごして終わります。合体する感じ、現実と幻想が交錯する感じ、とても最高で切なくて美しかった…。

 

潤くんは舞台終了後、すぐいなくなっていたけれど、観客席の後ろで、立ってカーテンコールを見ていて(ちらっと席見てすみません。勿論その後きちんと拍手しました。)、ああ、中村屋も潤くんも最高だなと思いました。忙しい中、名古屋まで来るって労力もすごいけど、刺激を受けられるもの、観たいものを観に来るバイタリティーが松本潤松本潤たる所以で、そういう松本潤だから私はずっと好きなんだろうなと改めて思いました。「かっこいい」だけが理由だったら、ここまでずっと好きじゃない気がするから。

 

最後、松本さんの話になってしまいましたが、潤くんにしろ、勘九郎さん・七之助さんにしろ、「伝統的な様式美」を大切にしていて、そのうえでその芸能を「時代に合わせたもの」に新しさを付与し続けていて、『変わらないために変わる』ということを、上の世代から受け継いできたものをつないでいく、発展させていくという気概をすごく感じる。それって本当にかっこいい。

数年前、大学で、伝統芸能の講義を受講したのですが、その講義で最初にやったことと云えば、「嵐のPVとメイキングを見ること」だったのです。

「大衆芸能」が大衆芸能たる所以があって、その中で素晴らしいものは時代に合わせて形を少しずつ変えながら、あるいはエッセンスとして他の芸能に影響を与えているということが言いたかったようで(花道や宙づり、様式美的な型)。歌舞伎や浄瑠璃も、つまるところ「多くの人を楽しませるもの」だということは変わらなくて、そのための努力というのは続けていかないといけないと、上流階級の特権のようにしては廃れていってしまうというようなこと言っていて、そうだよなぁと強く思ったのを覚えています。

伝統を大切にしながら、その時代に合ったものにしていくたゆまぬ努力をしていく、「僕らがつないでいく」といった気概を持った彼等をこれからも応援していきたいです。

そして、松本潤さんと中村七之助さんの共演、松本潤さんの舞台を心よりお待ちしております!! 本当に素晴らしい舞台をありがとうございました。また、観劇させていただきます!