異世界旅行記

所謂、コンサート備忘録。

アイドルと云う名のジレッタ (2017年5月13日上を下へのジレッタ)

 かなり日が経ってしまいましたが、5月13日、上を下へのジレッタ、観劇してきました。

 元々東京に行く用事があって、機会とチケットが無くて、行ったことのなかったジャニーズ出演の舞台、ぜひ観てみたいというのが前々からあったので、舞台が発表されて、それが東京行く日で、主演が横山さんで、しかも私の愛するブラックジャックの生みの親・手塚治虫氏の漫画が原作とあっては、行きたさしかない!と即座に申込み。運よく当選の運びとなり、見てきました。

 内容が難しそうだったので、原作を読んでから行くことに。原作の混沌さは江戸川乱歩のそれで、読む者を巻き込みつつ異世界へ誘う内容で、とても混沌としていたので、どう舞台化するか、非常に楽しみでした。

 

 

www.bunkamura.co.jp

あらすじ

1960年代、東京。
 自称・天才TVディレクター門前市郎(横山裕)は、その斬新すぎる演出が大手芸能プロダクション竹中プロの逆鱗に触れ、テレビ業界を追われてしまう。門前はこれを機に身辺を一新しようと、契約結婚していた彼のブレーンである間リエと離婚。
 門前は竹中プロをクビになった覆面歌手・越後君子をスターダムにのし上げることで復讐しようとする。が、現れた君子の容姿が実は不器量であったことを知る。しかし空腹となった君子はみるみるうちに絶世の美女へと変貌を遂げる。なんと空腹になると変身するのだ。
 門前はすぐさま芸能事務所『門前プロ』を立ち上げ、芸名・小百合チエと名付けた君子と専属契約を結ぶ。事務所設立および小百合チエお披露目の記者発表を終え、目玉企画としてブロードウェイのミュージカルスター、ジミー・アンドリュウスとの共演を目論む。

 チエには共に上京した同郷の恋人、漫画家の卵である山辺音彦がいた。一緒になるために成功を夢見る貧しい二人……
ある日チエを訪ねてきた山辺が見たのは、仕事の為に空腹を我慢させられ、あられもない姿で写真撮影をしている様子だった。門前は怒り狂う山辺をなだめながら外へ。そのままビルの建設現場でもみ合い、山辺は足を滑らせ、ビルの土台と地面のすき間の穴に落ちてしまう。山辺の死を確信して呆然とする門前
 しばらく時が過ぎ、門前は芸能界での大きな仕事に失敗し、落胆の日々を送っていた。そんな中、荒唐無稽な妄想(ほとんどはかつてボツにした漫画のアイディア)によって作られた、夢とも違う『ジレッタ』と呼ばれる世界を彷徨い生きていた山辺と再会。『ジレッタ』の世界を体感した門前はすっかり魅了される。

「テレビなんざぁ今にラジオと同じ空気みたいな存在になる。大衆はもっともっとあくどい刺激を求めるようになるんだ。じゃあそいつは何か? その世界へ自分ごと飛び込めるような刺激……『ジレッタ』さ!」

 門前は『ジレッタ』で再起を図り、自分を追放した芸能界にも復讐を企てる。それはやがて政治の世界をも巻き込んでいく

(引用:上を下へのジレッタ公式HP)

 

 

で、結果、非常に面白かったです。

まず一番に言いたい。「妄想歌謡劇」と銘打っており、最初の最初のから歌で楽しかったのだけれども、最初の最初から、「全てまやかし 全ては虚構」「どれも演出!どれもたてまえ!」とアイドルに歌わせてしまうのは、最強で最高。ずるい。

途中に出てくる元アイドル達のパートの歌も、「全てまやかし 全ては虚構」という部分を強調・補足するようなもので、芸能界のどす黒さをサラッと歌詞に落とし込んでしまっているの、本当にゾクゾクする。

 

 

そして何よりも、セットの無駄の無さがすごい。本当に無駄がない。転換の間に少し息をつくという間もないくらいに。絵巻物のごとく、繰り広げられる美しさだった。

ステージ上に何層かの踊り場を作っているのだけれども、幕をさげて時にスクリーンとなり……。スクリーンの出し際が本当に無駄がない。そこまで大きくない舞台だからこそ出来るというところもあると思うのですけれども、あの大きさを最大活用した感じが本当に最高だった。

 

 

舞台が「虚構」ということで、殆どのシーンのどこかしらに、漫画的なモノ(イラストで描いた家具や景色)が配置してあり、それが、妙な違和感を醸し出していて、虚構と現実の狭間をうまく表現しているなと思った。

 

 

「妄想歌謡劇」ということで、面白いクセになる歌がいっぱいあって、とても楽しかったです。横山さんもそりゃ当然歌うシーンが多くて、横山さん自身常々「歌は上手くない」って仰っているし、そりゃ歌で圧倒的に魅せるという感じではなかったけれど、私は門前としてすごく「良かった」んですよね。(というか、私横山さんの声が結構好きという所もあると思うのですが。同調してくる声というか、丸い声というか。)

そして、門前のキャラクターが、すごく横山さんとダブるところが少なからずあって。歌を、声を通して同調する感じ。ゾクゾクする感じ。最高に良かった。

門前のキャラクターのビジュアルもそうなんですけれども、原作読んでうっすら感じていたことが、舞台観て、「あっ、門前が居た……」って思ったんですよね。

敏腕プロデューサーな門前。元妻のリエが「あなたが人を驚かせる時、喜ばせることを楽しんでいたけれど、それ以上に自分が楽しんでいた。」(意訳)みたいな台詞があったのですが、ドッキリだったり、エイトレンジャーだったり仕掛ける横山さん、とても楽しそうだよなとか、そんなこと考えてみたり。

「有能だけど不器用」「何処かかけているからこそ、何処か強い引力がある」、そんな感じが、ひしひしと伝わりました。圧倒的に突き放す歌声ではないからこそ、気持ちが伝播する感じがあって、とてもよかった。本当に良かった。あと、演技、良いなあ……と思って観てました。門前が居た……

 

 

 歌姫を演じた中川翔子さんは、「走り出した思いが今でも~」という歌をどこかの歌番組で聞いたくらいだったんですけど、歌声切ねえ、上手い。そして、しょこたん可愛いかった……。中川さんは、太った本来の姿の君子、スレンダー美人な小百合チエへの転換とても大変だったと思うんですけど、すごくスムーズになさっていて、練習の賜物だなと思いました。(ただ、君子が山辺に、君ちゃんと呼ばれていて、そのシーンに横山さん居て、たまに混乱した())

 

 本仮屋ユイカさんは凛とした美しさを持った方で、横山さんと並ぶと二次元が過ぎるのでは……と思いました、ええ。綺麗だった。コミカルな本仮屋さん、あんまり印象なかったから、とても新鮮な感じでした。

 浜野健太さんは、存在感すごい!!!毒っ気と純粋さを共存させた演技で、ゾクゾクってなったり、クスクスってなったり、シクシクってなったり、そういう感情の揺れ動きが伝わる感じで、すごいな……と思いました。

 

 

 竹中直人さんは、舞台慣れがすごいし、持ってくな~~~と思ました。キャスト見て、竹中さん舞台で観るの、かなり楽しみにしていました、ええ。いい意味でクセ強いんじゃ~~。また、観たいなあと思いました。

 

 

 あと、アンサンブルキャストの方がすごくよかった。ポップでキャッチで、楽しくなるような演技されていたし、歌詞の情報量がすごい面倒な歌(褒めてる)をあんなにも軽やかに歌うとはと感激していました。 

 

 今回の舞台、パンフレットを拝見するに、「歌が苦手」「歌は初めて」と仰っている方が少なからず居て、今回のキャスティングは、キャラクターの雰囲気だったりを重視して行ったのだろうなと思ったのだけれども、それ、すごく大正解……という舞台だった。とても楽しかった~~~~~~~。

 

関ジャニのメンバーや嵐の相葉さんも観劇されたようで、アイドルの方があれをどう解釈したかめちゃくちゃ知りたい。気になる

 

 

「何でもやるのがジャニーズ」と云った横山さん、本当、何でもがむしゃらに挑戦してかっこよかった! 荒んでいる私でも「現実頑張らなくては……」と後ろ向きな人間でも鼓舞してくれるアイドル、本当アイドル。挑戦する姿は美しい。私もつまらない現実を頑張って生きるよ……

 

 

安田さんも「俺節」、大倉さんも「蜘蛛女のキス」というどちらもこれまた高度なことが求められそうな舞台を同時期にやっているの本当に純粋にすごいな……かっけえな……と思います。お金とチケットの関係上、行けないけれど、陰から応援しております……。色々と大変かと思いますが、ご自愛くださいませ……

 

アイドルと云う最高に熱いジレッタ、最高にゾクゾクするジレッタが存在する現実ありがとう……。今日も今日とて頑張ります……